偽島スケッチです。
簡単に言うと、絵を書く人たちがキャラクターの一瞬の魅力をスケッチするように、絵を書かない私が、牧野瀬悠の日常を現在過去未来問わず、スケッチするみたいに切り取れたらなあっていう、ただそれだけの記事です。ちょくちょくアップするかも。
と、言うわけでこれは日記にかけない日常の切り取りです。基本的に山もオチもありません。意味はあると良いなあ。
「偽島スケッチ・中学1年、放課後」
起立、気をつけ、礼って、挨拶が終わるとクラスは一気に騒然となる。放課後、その瞬間だけ訪れるお祭りの気配に、一日張り詰めていた気持ちをふっと緩めた。教科書をかばんにしまって、忘れないように先日もらったばかりの台本を手にとって、ほんの少しだけ、部活と授業の合間のこの時間に思いを馳せた。
教壇では、先生が綺麗な姿勢でトントンとなにかの書類を調えてた。出席簿西手は妙に沢山もってるから、また次に出す宿題の準備のための資料とかいまいち生徒にはありがたみのわからない今日職員会議の資料とかなのかもしれない。宿直の近藤さんがなにやら熱心に学級日誌とにらめっこしてる。近藤さんは、学級日誌に「特にありません」って書くのが気持ち悪いって言ってたから、またきっとあることないことスリリングに書き上げてるのだと思う。近藤さんの日誌は面白い。毎日あんなにハプニングだらけだったら、きっと誰も退屈なんて感じる暇なんて無いんじゃないかと思う。この前なんて、学校に紛れ込んできた犬が廊下と言う廊下を走り回って、職員室にあった抜き打ちテストを食べてしまった事になっていた。実際には、校舎をちょっと走り回ってすぐにでていっただけなのに。そういえば、テストの翌日、近藤さんは「私達テストに備えて勉強してるのに、不意打ちテストなんてずるい」とぼやいてた。
もちろん、私達の学校生活は、近藤さんの日誌よりずっと退屈で平凡なのだけど。
「ユウ、早くしろよ。先輩集まっちゃうぞ」
今日の近藤さんの日誌がどうなってるのか、楽しみにしながらぼーっとしてると 急に大声で叫ばれた。
私のこと、ユウって呼ぶのは一人しか居ないから、クラスの皆は誰を呼んだんだろうってキョトンとしてる。
真っ赤になりそうなのを頑張って我慢して、小さな声で「今行くから」と返事した。
「え?」
こっちの気なんて知らずに、ユウは、相澤勇君は怪訝そうに聞き返す。
すぐに準備をして、扉の前で待つ相澤君に
「ユウって相澤君の名前でしょ。私は悠、はるか。いい加減普通の名前で呼んでよ」
と、苦情を言った。
「良いじゃん、別に。悠ってユウって読むし、普通だよ」
相澤君はどこ吹く風。私の言う事なんて聞いてくれない。
「紛らわしいじゃん。勇君に悠さんなんて」
「誰も勇君なんて呼ばないって、だから大丈夫」
それ、理由になってないと思うんだけど。
「勇君、いい加減にしてよ。……これでちゃんと呼んでくれるんでしょ」
そういうと、相澤君は何故かそっぽを向いて、
「ほら、早く行こう。遅刻しちゃうよ」
何事も無かったみたいに歩き出した。
[0回]
PR