忍者ブログ
  • 2024.04
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 2024.06
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【2024/05/15 17:42 】 |
偽島スケッチ『中学二年生』 最初のデート
 友情ってなに? 恋愛感情って何? 友達と恋人の境目は? 
 友達に聞いたら教えてもらえたけど、何度聞いてもやっぱりフワフワしてて、じゃあ、私と相澤君は付き合ってるのかなあって考えてみたけど。いまいちピンことなかった。
 私と相澤君を指して、あの子たち付き合ってるんでしょ? なんて噂もたまに耳にしたりするんだけど、カァっと恥ずかしくなる気持ちを抑えて、ちょっと考えてみる。すると、そうだっけ? 私達付き合ってるってことでいいんだっけ? って、聞き返したくなっちゃう。
 大丈夫、あなたたちの関係は恋人同士であってますなんて神様が認定してくれたらわかりやすくていいのに。
 ストローが勢いよくクリームソーダを吸い上げた。
 あ、ダメ。あんまり早くのみすぎちゃうと間が持たなくなっちゃう。
 クリームソーダがなくなってしまわない様にすこーしずつゆっくりと口に含んだ。アイスクリームの端っこを撫でるように掬いとって、ちびちびなめる。クリームソーダとアイスクリームの境目、味が混ざったみどりいろの境界線が、泡を浮かべながらゆっくりと広がっていった。
 味なんて、さっぱりわからない。
 正面に座る相澤君の顔が視界に入らないように、そっと目を伏せた。
 相澤君はなんか、しきりに窓の外を気にしてて、全然にクリームソーダに手をつけてない。お店にはいってからはずーっと無言。なにこの沈黙って思うけど、私も何を話していいやらさっぱりわからなくて、氷をかき混ぜたり、アイスクリームを突っついてみたり、落ち着かない気持ちを一生懸命抑えながら目の前のクリームソーダと不毛な格闘をしてた。無理に試合を引き伸ばして判定勝ちを狙うボクサーの気分。かも?

「ユウ、今から喫茶店いかない?」
 部活が終わって、つかれきった体を抱えて家路に着こうとしたら、相澤君に声をかけられた。
 相澤君とは何となく家の方向が一緒だから、帰りが一緒になった時は話をしながら帰ることも多い。同じ演劇部だから、帰りのタイミングなんてほとんど一緒。部活の皆とわいわい話しながら帰るときならともかく、たまに一人で帰るときには、何となく相澤君を待つのが習慣になってた。
「なんで?」
 相澤君は紺の学校指定のバッグを重そうに肩かけて、私の返事なんて聞かなかったみたいに歩き出す。
「いい喫茶店を見つけたんだよ」
 なんて口にするときも、振り返りもしないで、ずんずんと足を速めた。
「いい喫茶店って、このあたりで? 相澤君、そういうの興味あったっけ?」
 早足で追いついて隣に並ぶと、相澤君はやっとこちらを振り向いて、歩く速度を少しだけ緩めてくれる。
「別に、たまたまだよ」
 殊更いつもと同じように振舞ってるけど、相沢君の動きはちょっと硬い。さっきからバッグの紐をぎゅって握ってるし、こっちを見てもすぐに目をそらして、正面をにらみつけるように真直ぐ前を見る。
 なんだろ? って、ごめん。その時は本当になんにも思わなかったんだ。

 何となく促されるままに窓際の席に座って、二人でクリームソーダを頼むと、途端に相澤君はそわそわしはじめた。私も何となく、これってデートみたいだとか思ってしまって、何かいいかけては言葉を飲み込んだ。
「台本が欲しいね」
 って、うっかり口を滑らせてしまったら、相沢君も「うん」とか頷いちゃって。
 お互いに「あ」なんて、一瞬目を合わせた。
 窓の外を、制服の人たちが通り過ぎるたびに、相澤君は一瞬体をこわばらせる。私も、どうか知ってる人が通りませんように。ってちょっとだけ思いながら、そんな相澤君をぼうっと見つめてた。
 店内には、ラジオのお姉さんが話す交通渋滞の情報が流れてて、
 車になんて乗らないのに「今、国道混んでるんだね」とか「高速乗ったほうが効率いいかもな」なんて、場繋ぎのためだけに言葉にしあった。
 クリームソーダを飲み終わると、相澤君が「行くか」と立ち上がった。相沢君のクリームソーダはとっくに解けて混ざり合って、メロンソーダなのかアイスクリームなのか、よくわからないものすごく甘そうな飲み物に様変わりしてた。
「美味かった」
 相澤君が取ってつけたように感想を言う。
「全然飲んでないじゃん」
 指摘すると
「次来たら全部飲むよ」
 って、さらっと。
「そっか」
 だから、何となくふーんって、そうだねって、私は頷いた。

 あれ? 遠まわしに誘われたのかな? って気がついたのは家に帰ってから。
 ……布団に顔をうずめて、
 そこは、「そっか」じゃないだろ私! って、すっごくじたばたした。
 ぎゃー。

拍手[1回]

PR
【2010/06/18 09:29 】 | 偽島スケッチ | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
<<探索6回目 | ホーム | 探索5回目>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














虎カムバック
トラックバックURL

<<前ページ | ホーム | 次ページ>>